親を引き取るタイミング|しっかりした母だからこそ、一人で決めていました

夕暮れの道の先にある実家 親の介護

離れて暮らす親を、いつ引き取るか。

まだ一人で大丈夫だろうか。

そろそろ動いたほうがよいのだろうか。

その間で迷っている方は、多いと思います。

私は数年前、90代の母を引き取りました。

きっかけは、母のすぐ近くで暮らしを見てくださっていた、ご近所の方の率直な言葉でした。

そして母を引き取ったあと、私は初めて、母のお金のことや、母が一人でどのようなことを決めていたのかを知りました。

母は、しっかりした人です。

だからこそ、自分のことは自分で決め、家族には詳しく話していませんでした。

この記事では、母を引き取ると決めたきっかけと、実家の片付けを通して分かったことをお話しします。

※母を引き取ってから特別養護老人ホームへ入居するまでの流れは、こちらの記事に書いています。

「『若干毒親』の母を引き取って介護した私の記録|同居・介護離職から特養入居まで」

  1. 引き取ろうと決めたきっかけは、ご近所の方の言葉でした
  2. ご近所の方から聞いたことを、母にそのまま伝えました
  3. 母に大きな抵抗はありませんでした
  4. 実家は、知らないうちに少しずつ直されていました
  5. 母のお金について、私は何も知りませんでした
  6. 母は、自分の暮らしと兄夫婦との同居を思い描いていました
  7. 母の一人暮らしは、地域の方々に支えられていました
  8. 何かしていただくたびに、母はお礼をしていました
  9. 困ったのは、記録がほとんど残っていなかったことです
  10. 手が入っている場所と、残っている明細の数が合いませんでした
  11. 母は、しっかりした人です
  12. あとになって、少し怖くなりました
  13. 怖かったのは、母がすべてを一人で決めていたことです
  14. 売却に備えて、修繕の記録を集めました
  15. 母のお金の管理は、いまも私が続けています
  16. 母を引き取ったことで、修繕にも区切りがつきました
  17. 母を責める気持ちはありません
  18. 離れて暮らす親御さんがいる方へ
    1. 1.実家に手が入ったら、その都度聞いておく
    2. 2.領収書を入れる場所を、ひとつ決めておく
    3. 3.相談できる相手がいるかを確認する
    4. 4.お礼や大きな支出も、簡単に記録しておく
    5. 5.これからの暮らしについて、早めに話し合う
  19. 「少し早いかな」と思うくらいで、ちょうどよかった
  20. 正直に言うと、迷いもありました
  21. いま母が穏やかに過ごしていることが、何よりの答えです

引き取ろうと決めたきっかけは、ご近所の方の言葉でした

実家の前の細い道と隣家

私が母を引き取ろうと考えたのは、実家の中を詳しく確認する前のことでした。

きっかけは、ご近所の方の言葉です。

その方は、いつも母のことを気にかけてくださっていました。

私も帰省するたびに、お土産を持ってご挨拶に伺っていた方です。

あるとき、母の一人暮らしについて、率直な心配を伝えてくださいました。

いちばん近くで母の様子を見てくださっている方の言葉です。

離れて暮らす家族が見るのとは、重みが違いました。

ご近所の方から聞いたことを、母にそのまま伝えました

私は、ご近所の方から聞いたことを母に伝えました。

言い方を工夫したわけでも、説得しようとしたわけでもありません。

「いちばん近くで見てくださっている方が、心配していたよ」

そう伝えただけです。

母は、その方のことを信頼していました。

自分でも、これからの暮らしについて考えるところがあったのかもしれません。

私の話に、静かに耳を傾けてくれました。

母に大きな抵抗はありませんでした

一緒に暮らしたいと話したとき、母は嫌がりませんでした。

母は、何事も前向きに受け止める人です。

私が提案してからは、自分なりに家の中を整理し始めました。

いるものと、いらないもの。

持っていくものと、置いていくもの。

私が何も言わなくても、少しずつ片付けていたのです。

母のなかでは、すでに覚悟が決まっていたのかもしれません。

実家は、知らないうちに少しずつ直されていました

張り替えられた玄関の床

母を引き取るために実家へ通い、片付けを始めました。

そのとき目についたのが、家のあちこちに手が入っていたことです。

玄関のフローリング。

キッチン周りの床。

母が暮らしていた隠居部分。

古い家なのに、ところどころ新しくなっていました。

急にまとめて直したのではありません。

母は、ずいぶん前から少しずつ修繕していたようです。

私が帰省するのは、年に数回でした。

その合間に、母が自分で考え、自分で依頼していたのだと思います。

母のお金について、私は何も知りませんでした

母のお金について、私はまったく把握していませんでした。

母は自分で管理していましたし、親子のお金をはっきり分けて考える人でした。

子どもに任せるつもりはなかったのだと思います。

同居して、初めて通帳などの管理を任されました。

残高を確認すると、数百万円は残っていました。

けれど、思っていたより少ないというのが、正直な感想でした。

世間の高齢の方が、どのくらいの蓄えを持っていらっしゃるのかは分かりません。

ただ、大きな実家をひとつ維持するには、想像以上にお金がかかるのだと知りました。

残っていた修繕の明細だけでも、合計すると50万円ほどありました。

明細が残っていない工事も、ほかにあったようです。

母は、自分の暮らしと兄夫婦との同居を思い描いていました

母が、少しずつ家を直し続けた理由。

思い当たることがありました。

母は、自分が暮らす隠居部分も、きれいにリフォームしていました。

自分の家で、できるだけ気持ちよく暮らしたい。

そんな思いがあったのだと思います。

その一方で、母は、いつか兄夫婦と一緒に暮らすことも望んでいました。

けれど、兄夫婦は遠方ですでに生活の基盤を築いていました。

仕事も暮らしもあり、実家へ戻って一緒に暮らすことは、現実的には難しいことでした。

それでも母は、いつか兄夫婦が来てくれるかもしれないと、どこかで思っていたのかもしれません。

自分が暮らす場所を整えながら、家族と一緒に暮らす日も思い描いていた。

そう考えると、少し切なくなりました。

母の一人暮らしは、地域の方々に支えられていました

手入れされた庭と縁側

片付けを進めるうちに、母が多くの方に支えていただいていたことも分かりました。

修繕をお願いしていた、ご近所の方。

地元で家業を継いでいらっしゃる、その方のご兄弟。

庭の手入れをしてくださっていた、シルバー人材センターの方。

ご近所の方のお母様と母は年齢が近く、以前からのご縁もありました。

困ったときに、すぐ相談できる相手がいたことは、本当にありがたいことだったと思います。

何かしていただくたびに、母はお礼をしていました

母は、何かしてもらったら、必ずお礼をする人でした。

現金のこともあれば、品物のこともあったと思います。

私が帰省すると、こう言うことがありました。

「あの方にお礼をしたいから、お菓子を買いに連れて行って」

そう言われて、一緒に買い物へ出かけたことが何度もあります。

母がお礼をしていた相手は、ご近所の方だけではありませんでした。

少し離れた場所に住む方にも、その都度お礼をしていたようです。

最初は「そんなにたくさんの方に」と思いました。

けれど、それだけ多くの方が、母のことを気にかけてくださっていたということです。

一人暮らしの母は、たくさんの方に見守っていただいていました。

いま思えば、ありがたいことでした。

困ったのは、記録がほとんど残っていなかったことです

机に置かれた通帳と印鑑と老眼鏡

ただ、家族として困ったこともありました。

母は、領収書をすぐに捨ててしまう人だったのです。

そのため、家には記録がほとんど残っていませんでした。

  • いつ工事をしたのか
  • どこを直したのか
  • 誰に頼んだのか
  • いくら支払ったのか 家族の誰も、全体を把握できていませんでした。

手が入っている場所と、残っている明細の数が合いませんでした

調べていくうちに、気づいたことがあります。

ご近所の方にお願いしたと確認できたのは、玄関のフローリングと、キッチン周りの床の張り替えでした。

けれど、家の中で手が入っていた場所は、それだけではありません。

では、ほかの場所は誰が直したのか。

母に聞いてみました。

けれど、業者の名前は出てきませんでした。

覚えていないのかもしれません。

あるいは、言いたくなかったのかもしれません。

いくら使ったのか。

そう聞かれるのが、嫌だったのだと思います。

母は、自分のお金は自分で管理したい人でした。

同居するまで、私は母の通帳を一度も見たことがありませんでした。

領収書もなく、依頼した業者も分からない。

そうなると、確かめる方法がありませんでした。

母は、しっかりした人です

誤解のないように書いておきます。

母は、しっかりした人です。

物忘れがひどいわけでも、判断ができないわけでもありません。

自分のお金は自分で管理したい。

そういう気持ちが、はっきりある人でした。

それは立派なことだと思います。

けれど、家の修繕という大きな買い物を、一人で決めて、一人で支払っていました。

家族には相談せず、詳しいことも話していませんでした。

そのことに、私は母を引き取ってから初めて気づきました。

あとになって、少し怖くなりました

私の知らない業者が、実家へ出入りしていたのかもしれない。

そう考えると、少し怖くなりました。

もし、高齢者の一人暮らしだと分かったうえで訪ねてきた人がいたとしたら。

一か所の工事が終わったあと、「次はここも」と話が続いていったのかもしれません。

母は、頼まれれば断りにくい人でした。

業者から見れば、よいお客さんに見えていた可能性もあります。

ただし、これはすべて私の想像です。

実際に騙されたという事実はありません。

きちんとしたところへ依頼していたのかもしれません。

そうであってほしいと思っています。

けれど、いまとなっては確かめることができません。

怖かったのは、母がすべてを一人で決めていたことです

誰かに騙されたという話ではありません。

私が怖いと思ったのは、母が大きなことまで、すべて一人で決めていたことです。

本当に必要な工事なのか。

提示された金額は妥当なのか。

ほかの方法はないのか。

一度、誰かに相談できていたら、違う見方もあったかもしれません。

一人で決められることと、一人で決め続けることは、少し違います。

母はしっかりしていたからこそ、家族に頼らず、自分だけで進めていたのだと思います。

そのことに気づいたとき、母を引き取った時期は、あれでよかったのだと思いました。

売却に備えて、修繕の記録を集めました

整えられた書類の束とペン

私が修繕の記録を集めたのは、誰かを疑うためではありません。

将来、実家を売却するときの税金について確認するためでした。

土地や建物を売却したときの譲渡所得は、売却金額から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算します。

取得費には設備費や改良費などが含まれる場合がありますが、通常の修繕費がすべて取得費になるわけではありません。

どの費用が該当するかは工事内容によって異なるため、私は税務署の無料相談も利用しました。

そこで、記録が確認できる工事については、これまでにかかった費用をまとめた書面を、あらためて作成していただきました。

そして家の中を見て回り、どこに手が入ったのかを一つずつ確かめました。

あとから確認できるように、分かったことを記録として残しました。

母が、自分の住みやすいように家を直したことは、よいことだと思っています。

父と母の家ですから、母が自分で決めてよかったのです。

私は、あとで困らないように記録を整えただけでした。

売却時の税金の扱いは、工事内容や物件の状況によって異なります。詳しくは、税務署や税理士へご確認ください。

母のお金の管理は、いまも私が続けています

母を引き取ってからは、お金の管理を私がしています。

通帳も、支払いも、記録も。

いまも変わらず続けています。

時間がたってから過去の支出を調べるのは、とても大変です。

だからこそ、母を引き取ったときに一度整理し、区切りをつけておいてよかったと思っています。

※親のお金の管理について、私がしていることはこちらの記事に詳しく書いています。

「親のお金の管理|口座をまとめるとき本人確認で困ったことと、私がしている記録の残し方」

母を引き取ったことで、修繕にも区切りがつきました

母を引き取ると決めたとき、実家の修繕も終わりになりました。

いま振り返ると、それもよかったのだと思います。

家は、一か所を直すと、また次の場所が気になります。

古い家であれば、修繕にきりがありません。

そして母は、人から勧められると断りにくい人でした。

もし、あのまま一人で暮らし続けていたら、修繕も続いていたかもしれません。

よいところで区切りをつけられた。

そう思っています。

母を責める気持ちはありません

母は、自分の家を自分の手で守っていました。

住みやすいように少しずつ直し、助けてくださった方にはきちんとお礼をする。

それが、母のやり方でした。

母を責める気持ちは、まったくありません。

ただ、領収書や簡単な記録だけは残しておいてほしかった。

そして、大きなお金が動くときには、一度相談してほしかった。

思うのは、それくらいです。

離れて暮らす親御さんがいる方へ

同じように、離れて暮らす親御さんを心配している方へ。

私の経験から、お伝えしたいことが五つあります。

1.実家に手が入ったら、その都度聞いておく

どこを、いつ、誰に頼んで直したのか。

責めるために聞くのではありません。

将来、家を売ることになったときや、工事後に不具合が出たときに、記録が必要になることがあるからです。

あとからまとめて調べるのは、本当に大変でした。

2.領収書を入れる場所を、ひとつ決めておく

親御さんが領収書を捨ててしまう方なら、専用の封筒や箱をひとつ用意するだけでも違います。

「工事や大きな買い物の領収書は、とりあえずここに入れておいてね」

そう伝えるだけでも、記録が残りやすくなります。

3.相談できる相手がいるかを確認する

しっかりした親御さんほど、自分で決めて、自分で支払います。

それは、立派なことです。

けれど、家の修繕のような大きな買い物こそ、一度誰かに相談できたほうがよいと思います。

必要な工事なのか。

金額は妥当なのか。

契約しても大丈夫なのか。

家族でなくてもかまいません。

信頼できるご近所の方や、地域の相談窓口など、話を聞いてもらえる相手がいるか確認しておくと安心です。

4.お礼や大きな支出も、簡単に記録しておく

何かしていただいたら、お礼をする。

それは、とてもよいことです。

ただ、あとから家族が全体を把握できるように、簡単なメモが残っていると助かります。

疑うためではありません。

本人と家族の両方が、あとで困らないためです。

5.これからの暮らしについて、早めに話し合う

親を引き取るかどうかは、簡単に決められることではありません。

すぐに結論を出す必要もないと思います。

ただ、元気でしっかりしているうちから、これからの暮らしについて話しておくことはできます。

どこで暮らしたいのか。

困っていることはないか。

家やお金の管理を、これからどうするのか。

親が一人でできているから大丈夫と決めつけず、ときどき話を聞いてみる。

それだけでも違うと思います。

「少し早いかな」と思うくらいで、ちょうどよかった

親を引き取るタイミングに、正解はないと思います。

家庭の状況も、親子の関係も、一人ひとり違います。

ただ、私の経験では、

「少し早いかな」

と思うくらいで動いて、ちょうどよかったです。

母は、まだ自分で考え、自分で生活を整えることができました。

だからこそ、引っ越しについても一緒に考え、母自身が家の中を片付ける時間を持つことができました。

もう少し遅かったら、母だけでなく、動く私の負担も大きくなっていたと思います。

正直に言うと、迷いもありました

いま振り返ると、もう少し遅くてもよかったのではないかと思うこともあります。

母はまだ元気でしたし、実家での暮らしも楽しんでいました。

けれど、そのたびに考え直します。

修繕にきりがなかったこと。

一人暮らしだったこと。

大きなことまで一人で決めていたこと。

そして、私自身の体力のこと。

親を引き取り、住まいを移し、その後の暮らしを整えるには、家族にも体力が必要です。

そう考えると、やはり、あの時期でよかったのだと思います。

いま母が穏やかに過ごしていることが、何よりの答えです

窓辺の椅子と湯呑みと一輪の花

いま母は、安心できる場所で穏やかに過ごしています。

その姿を見ると、あのとき動いてよかったと思います。

親を引き取ることだけが、答えではありません。

近くへ呼び寄せる方法もあれば、介護サービスや地域の見守りを利用しながら、一人暮らしを続ける方法もあります。

大切なのは、親が一人ですべてを抱え、誰にも相談できない状態にしないことだと思います。

母は、しっかりしていたからこそ、一人で決めていました。

一人でできることと、相談できる人がいること。

その両方があれば、もっと安心できたのかもしれません。

同じように悩んでいる方が、親御さんとこれからの暮らしについて話すきっかけになればうれしいです。

※親が元気なうちに聞いておきたかったことは、こちらの記事にまとめています。

「親が元気なうちに聞いておきたいこと|母を引き取って初めて知った家・土地・お金の話」

訪問販売や不審な住宅工事などで困ったときは、お住まいの地域の消費生活センター、または消費者ホットライン「188」へご相談ください。

今日という一日が、あなたにとって心地よい「ちょうどいい距離」の一歩になりますように。

きーのこと

タイトルとURLをコピーしました