介護離職して分かった、辞める前に知っておきたかったこと

介護離職を考えたときのノートと電卓。仕事を続けるか悩んだ日 仕事とお金

「仕事をとるか、介護をとるか」

そんな二択で悩んでいる方に、実際に介護離職をした私の経験をお話しします。

先にお伝えしておくと、私は今、こう思っています。

介護のために仕事を辞めることは、できれば避けたほうがいい。

きれいごとではなく、実際に辞めた本人としての実感です。

けれど同時に、辞めるしかなかった当時の自分を責める気持ちもありません。

この記事では、私が仕事を辞めるまでの経緯と、辞めてから分かったこと、そして退職前に確認しておきたかったことを、順番に書いていきます。

※母を引き取ってから特養へ入居するまでの経緯は、こちらの記事に書いています。

「若干毒親」の母を引き取って介護した私の記録

私が介護のために仕事を辞めるまで

当時の私は、介護施設で医療事務の仕事をしていました。

朝は早く、残業になる日もありました。

母との同居を始めた頃、母はこう言ってくれていました。

「仕事、頑張りなさい。私は留守番しているから大丈夫」

その言葉に甘えて、私はしばらく仕事を続けていました。

けれど、私が家を空けている長い時間のあいだに、母の行動範囲は少しずつ狭くなっていきました。

筋力が落ち、気持ちも沈みがちになり、口から出る不満も増えていきました。

仕事では毎日、介護の現場のすぐそばにいる。

それなのに家では、自分の母との暮らしが限界に近づいていく。

そのような毎日でした。

会社も、働き方を調整してくださいました

私は、すぐに仕事を辞めたわけではありません。

会社へ母の介護について相談したところ、施設事務の仕事を続けながら、一部にオンラインでの在宅業務を取り入れるなど、働き方を調整してくださいました。

私の事情に合わせた、特別な対応だったと思います。

本当にありがたく、会社には今も感謝しています。

その働き方を数か月続けましたが、新しい施設の開設などに伴い、少しずつ別の施設へ出向く仕事が増えていきました。

会社にも事情があり、私にも介護のある暮らしがありました。

お互いにできることを試してみましたが、これ以上続けることは難しいと感じ、最終的に退職を決めました。

結果として仕事は辞めましたが、在宅業務を取り入れた働き方を、一度でも試せたことには意味があったと思っています。

できるかどうかは、実際にやってみなければ分かりません。

勤務先へ相談すること。在宅勤務や勤務時間の調整など、できる方法を試してみること。

思うような結果にならなかったとしても、その過程は決して無駄ではないと感じました。

介護離職して分かったこと① 収入を失う不安

和室の机に置かれた開いたノートと電卓、ペン、手帳

一番大きかったのは、やはりお金のことでした。

母の施設費用は、母の年金でぎりぎり賄うことができました。

本当に「ぎりぎり」です。

もし母の年金が少なかったら、私の貯金や、わが家の生活費から補うことになっていたと思います。

そこに、自分の収入がない状態が重なっていたら——。

そう考えると、今でも少し怖くなります。

介護には、施設の費用だけでなく、細かな支出が重なります。

介護用品、通院、移動、引っ越し、施設へ入居するときの準備など、思っていた以上にお金がかかりました。

そして介護がいつまで続くのかは、誰にも分かりません。

収入の柱を自分から手放すことの重さは、仕事を辞めたあとに実感しました。

介護離職して分かったこと② 私は失業給付を受けられました

これは「辞める前に知りたかった」というより、「知らずに辞めたけれど、助かった」ことです。

会社には私の事情に合わせて、働き方を調整していただきました。

そこまで対応していただいたことへの感謝もあり、退職するときは、会社に対して介護を理由とした特別な扱いを求めず、通常の自己都合退職としました。

その後、ハローワークでは、母の介護が退職に至った背景にあることを正直に伝えました。

必要な確認を受けたうえで、私は失業給付を受けながら、次の働き方を探すことができました。

ただし、同じように自己都合で退職しても、すべての方が同じ扱いになるとは限りません。

親族の介護など、家庭の事情が急に変わり、離職せざるを得なかった場合には、「特定理由離職者」として扱われる可能性があります。

実際に該当するかどうかは、本人の事情や提出書類などをもとに、ハローワークが判断します。

退職を考えている方は、会社へ退職を申し出る前に、一度ハローワークへ相談しておくことをおすすめします。

参考:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

失業給付の受給条件や給付開始時期、必要な書類などは、一人ひとり異なります。必ずお住まいを管轄するハローワークへご確認ください。

介護離職して分かったこと③ 働き方は作り直せました

昼間の空いた電車の座席と、窓の外に見える桜と田畑

仕事を辞めたあと、私は母のデイサービスを、短時間の運動中心のものから、昼食付きの一日型へ切り替えてもらいました。

そして、母がデイサービスにいる時間内で働けるパートを、ハローワークで探しました。

見つけたのは、事務の仕事です。

勤務時間は10時から16時まで、週3日。

母がデイサービスへ行っている時間と、きれいに重なる働き方でした。

フルタイムで朝から残業まで働くことが難しくても、介護サービスの時間割に、自分の仕事を合わせることはできます。

この考え方にもっと早く気づいていたら、完全に仕事を辞めなくてもよかったのかもしれない。

今は、そう思うこともあります。

その後、母がサービス付き高齢者向け住宅へ移ってからは、もう少し長く働けるようになりました。

母との距離が一歩戻るたびに、私も自分の生活を一歩ずつ取り戻していきました。

それでも「できれば辞めないほうがいい」と思う理由

私は仕事を辞めたあと、働き方を作り直すことができました。

失業給付にも助けられました。

それでも、できれば仕事を辞めないほうがいいと思うのは、お金だけの問題ではないからです。

仕事に戻って実感したのは、仕事が自分の心を守ってくれることでした。

介護とは関係のない場所で人と話し、「介護をしている私」ではない、ただの自分に戻れる時間。

その時間があったからこそ、私はまた母と向き合うことができたのだと思います。

介護だけの生活になると、母の不満を聞くことが、一日のほとんどを占めるようになりました。

逃げ場のない場所で、罪悪感と苛立ちだけが溜まっていく。

自分の世界が、どんどん小さくなっていくように感じました。

※その頃の気持ちについては、こちらの記事に書いています。

「好きになれない親の介護。罪悪感との付き合い方を、経験者が本音で書きます

そして、もうひとつ。

介護が終わったあとも、自分の人生は続きます。

仕事とのつながりを完全に切ってしまうと、戻る場所だけでなく、「また働けるだろうか」という自信まで、少しずつ失われていくことがあります。

だからこそ、「辞める」以外の道を、一度立ち止まって探してみてほしいと思うのです。

辞める前に確認しておきたい5つのこと

障子のある和室の机に置かれた、白紙のノートとペン、一輪挿しの花

限界を感じているときに、たくさんのことを調べるのは大変です。

それでも退職を決める前に、できれば次の順番で確認してみてください。

※辞めずに済ませるために、まず整えたいのが介護サービスの時間割です。デイサービスのことは、こちらの記事に書いています。
「デイサービスは早めに検討してよかった|90代の母を通わせて分かったこと」

1.ケアマネジャーさんに、正直に相談する

家での本当の様子も、自分が限界に近づいていることも、取り繕わずに伝えてみてください。

「仕事を辞めようか迷っている」と、そこまで話してよいのです。

専門職の方が間に入ることで、状況が変わることがあります。

私の場合も、ケアマネジャーさんが母へやんわりと伝えてくださったことで、母の態度が少し変わりました。

2.介護サービスの内容と時間を見直す

デイサービスを短時間型から一日型へ変えるだけでも、働ける時間は大きく変わります。

利用日数を増やす、ショートステイを取り入れるなど、ほかの方法が見つかることもあります。

今使っているサービスが、本人だけでなく、介護する家族の生活にも合っているか。

ケアマネジャーさんと一緒に、もう一度見直してみてください。

3.勤務先へ介護のことを伝え、利用できる制度を確認する

介護休業、介護休暇、短時間勤務、時差出勤、残業の免除など、仕事と介護を両立するための制度があります。

介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。

一定の要件を満たす場合には、介護休業給付金を受けられることもあります。

介護休業は、自分一人で介護を続けるための期間というより、介護サービスの手配や家族の役割分担など、仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間と考えることが大切です。

参考:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」

なお、2025年4月からは、介護に直面したことを申し出た労働者に対し、勤務先が制度を個別に周知し、利用する意向を確認することなどが義務化されています。

参考:厚生労働省「法改正のポイント」

「辞める」の前に、「休む」「勤務時間を減らす」「働く場所を変える」という選択肢がないか、確認してみてください。

私のように、一部の業務を在宅へ切り替えてもらえる場合もあるかもしれません。

4.退職前にハローワークへ相談する

仕事を辞める場合でも、失業給付の扱いや、必要な書類を知ってから辞めるのと、知らずに辞めるのとでは、その後の安心感が違います。

退職理由を勤務先へどのように伝えるかも含め、できれば退職届を出す前に相談しておくと安心です。

5.「辞める」ではなく「働き方を変える」を先に考える

フルタイムからパートへ。

正社員から短時間勤務へ。

勤務日数を減らす、始業や終業の時間を変える、できる範囲で在宅勤務を取り入れる。

完全に仕事を辞めてしまう前に、働き方を変える道がないか、探してみてください。

すべてがうまくいくとは限りません。

私も会社に配慮していただき、数か月間は新しい働き方を続けましたが、最終的には退職しました。

それでも、相談し、試してみたことには意味があったと思っています。

同じ職場で続けることが難しい場合でも、退職と次の仕事との間を大きく空けない方法を探せるかもしれません。

厚生労働省も、職場への相談、介護サービスの利用、ケアマネジャーへの相談、自分の時間の確保などを、仕事と介護を両立するポイントとして案内しています。

参考:厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」

おわりに:もう仕事を辞めてしまった方へ

ここまで「できれば辞めないほうがいい」と書いてきました。

けれど、最後にお伝えしたいことがあります。

もう仕事を辞めてしまった方。

辞めるしかなかった方。

その判断が間違っていたとは、私は思いません。

私自身、会社に相談し、働き方を調整していただきました。

会社も私も、できることを試しました。

それでも、あのときの私には、仕事を辞める以外の道が見つかりませんでした。

介護をしている最中は、先のことを落ち着いて考える余裕など、なかなか持てないものです。

けれど、仕事を辞めたところで、すべてが終わるわけではありません。

介護サービスを整え、自分にできそうな仕事を小さく始めることで、生活も、自分自身も、少しずつ戻ってきます。

私も遠回りをしながら、働き方を何度も作り直してきました。

そして今も、これからの年齢と体に合った働き方を、あらためて考えているところです。

辞めたことを責め続けるのではなく、これからできることを、小さく探していけばいい。

今は、そう思っています。

※復帰までの道のりについては、こちらの記事に書いています。
「介護離職からパートで復帰するまで|50代・ブランク半年でも仕事はありました」


今日という一日が、あなたにとって心地よい「ちょうどいい距離」の一歩になりますように。

きーのこと

タイトルとURLをコピーしました