親の施設を探すことになったとき、情報源はたくさんあります。
大手の紹介サイト、施設のホームページやパンフレット、市役所でいただける資料。
参考にできるものは、本当にたくさんありました。私もひと通り目を通しましたし、どれも役に立ちました。
そのうえで、私が最初から決めていたことがひとつあります。
「最後は、自分の目で選ぶ」
私は介護施設で医療事務として働いた経験から、施設には、資料やサイトだけでは分からないことがたくさんあると知っていたからです。
母が暮らしたサービス付き高齢者向け住宅も、現在入居している特別養護老人ホームも、自分の足で見て回って選びました。
この記事では、私が実際に施設を探した手順と、見学で確認したことをお話しします。
※母を引き取ってから特別養護老人ホームへ入居するまでの記録は、こちらの記事に書いています。
資料は役に立ちます。それでも自分の目で見たかった理由
私は長年、大学病院で医療事務や医師事務作業補助者として働き、たくさんの患者さんやスタッフの方と接してきました。
その後、介護施設でも医療事務として働きました。
現場を見てきたからこそ、分かっていたことがあります。
パンフレットに書かれていることと、その場所に流れている空気は、別のものだということです。
設備や料金、サービスの内容は、資料でも比べられます。
けれど、そこで暮らしている方の表情や、スタッフさんの声のかけ方、施設全体の雰囲気は、実際に足を運ばなければ分かりません。
施設選びには、「時間」の問題もあります。
母を引き取り、私が介護と仕事を両立していた頃は、時間にも気持ちにも余裕がありませんでした。
見学に行けるのは、母がデイサービスへ行っている時間だけです。
限られた時間の中で、どの施設へ足を運ぶかを決める必要がありました。
手順① 資料を集めて、自分のリストを作りました

まず、紹介サイトや施設のホームページ、パンフレットなどを見て、通える範囲にどのような施設があるのかを調べました。
公的な情報としては、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」も利用できます。施設の所在地やサービス内容、費用などを比較するときの参考になります。
サービス付き高齢者向け住宅については、国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」でも検索できます。
紹介サイトは、どのような施設があるのかを知るには便利です。ただ私は、まだ探し始める前の軽い気持ちで問い合わせてしまい、その後の連絡が少し負担に感じられました。利用する場合は「いつ頃の入居を考えているか」を整理してから連絡すると安心です。
集めた情報をもとに、私は候補となる施設を10件ほどリストにしました。
リストには、次のような項目をまとめておくと比較しやすくなります。
- 施設の種類
- 自宅からの距離
- 月額費用と、そのほかに必要な費用
- 居室の広さ
- 食事の提供方法
- 医療機関との連携
- デイサービスなどの併設サービス
- 見学を申し込んだ日
- 電話で受けた説明や印象
そして、問い合わせと見学の申し込みは、施設へ直接電話しました。
直接電話をすることには、ちょっとした効用があります。
電話口での言葉遣いや説明の丁寧さから、その施設の雰囲気が、最初に少しだけ見えるのです。
もちろん、電話に出た方ひとりの対応だけで、施設全体を判断することはできません。
それでも、最初の問い合わせにどのように向き合ってくださるかは、ひとつの判断材料になりました。
※特養への申し込みと、入居が決まるまでの流れは、こちらの記事に書いています。
→「特養は100人待ちでも入れる?要介護3の母が入居するまでにしたこと」
手順② 見学の前に「下見」をしました

これは、私がおすすめしたい工夫です。
予約をして施設の中を見学する前に、外観と周辺の環境だけを先に見に行くのです。
下見では、次のようなところを確認しました。
- 自宅から施設までの距離と道順
- 家族が面会に通いやすい場所か
- 周辺の道路や交通量
- 敷地や建物が手入れされているか
- 日当たりや周囲の景色
- 全体から受ける印象
実際に行ってみると、資料だけでは分からないことが見えてきます。
敷地の手入れがあまりされていなかったり、周囲の環境が母には合わないと感じたりして、下見の段階で候補から外した施設もありました。
見学は、1件行くだけでも半日仕事になります。
先に外から確認しておくと時間の節約になりますし、正式に見学を申し込む前の段階なので、候補を絞りやすくなりました。
ただし、外観だけでは施設の中の様子までは分かりません。
あくまでも、見学へ行く施設を選ぶための下見です。
手順③ 見学で確認したこと

施設の見学では、パンフレットやホームページでは分からないことを中心に確認しました。
スタッフさんの表情と、声のかけ方
忙しい中でも、表情にあたたかさがあるか。
入居されている方へ、どのような言葉で声をかけているか。
急かすような話し方ではなく、その方のペースに合わせているか。
スタッフさん同士の雰囲気や、見学に訪れた私たちへの接し方にも、その施設らしさが表れるように感じました。
見学者にだけ丁寧に接しているのか、それとも入居されている方にも自然に声をかけているのか。
私は、後者のほうをよく見るようにしていました。
入居されている方の表情と過ごし方
見学では、そこで暮らしている方の表情や過ごし方も確認しました。
楽しそうに会話をされている方がいる施設もあれば、静かに座って過ごされている方が多い施設もありました。
もちろん、見学した時間帯や、その日のプログラム、入居されている方の体調によって、見え方は変わります。
短い見学時間だけで、その施設のすべてを判断することはできません。
それでも、
「母がここで一日を過ごすとしたら、どのような時間になるだろう」
と想像してみることは大切だと思います。
何かができるかどうかだけではなく、穏やかな表情で過ごせているか。
スタッフさんが、さりげなく目を配っているか。
そうしたところを見るようにしました。
食事がどのように用意されているか
食事についても、必ず確認しました。
- 施設内で調理しているのか
- 外部の業者へ委託しているのか
- どのような状態で届き、どこで温めるのか
- 噛む力や飲み込む力に合わせた食事に対応できるか
- アレルギーや治療食への対応はあるか
- 食事をする場所の雰囲気はどうか
施設内で手作りしているから必ずよい、外部委託だからよくない、ということではありません。
衛生管理や栄養面、個別の食事への対応など、見るべきところはほかにもあります。
ただ、母にとって食事は毎日の大きな楽しみでした。
そのため私は、どのように作られ、どのように提供されるのかを大切な条件のひとつにしていました。
部屋の清潔さと、建物の中の「距離」
居室や共用部分が清潔に保たれているかも確認しました。
そして、母の場合は、建物の中の「距離」も重要でした。
母は両膝の人工関節の手術を受けていて、長い距離を歩くことが負担になります。
そのため、次のような動線を実際に歩いて確認しました。
- 部屋から食堂まで
- 部屋からトイレまで
- 部屋からお風呂まで
- エレベーターまで
- 共有スペースまで
歩きたいという気持ちが残っていても、移動距離が長すぎると、だんだん部屋から出なくなることも考えられます。
親の身体の状態に合った造りかどうかは、暮らしの質にも関わる大切なポイントだと思います。
※母が特養で実際に暮らしてみて感じたことは、こちらの記事に書いています。
→「特養に入居して分かった暮らしと費用|家族の負担はどう変わった?」
相談員さんの対応
施設へ入居すると、家族の窓口になってくださるのは、主に相談員さんです。
契約のこと、面会のこと、日々の暮らしについての相談など、入居後も長く関わることになります。
申し込みの段階で質問に分かりやすく答えてくださるか。
こちらの事情を急かさずに聞いてくださるか。
分からないことを曖昧にせず、きちんと確認してくださるか。
相談員さんの対応の丁寧さは、入居後の家族の安心感にもつながりました。
パンフレットには載らない、大切なチェックポイントだと思います。
夜間の体制や医療との連携
夜間にスタッフさんが何人いるのか、体調が急変したときにどのような対応をしていただけるのかも確認しました。
- 夜間の職員体制
- 緊急時の連絡方法
- 提携している医療機関
- 通院が必要になったときの付き添い
- 看取りへの対応
- 薬の管理方法
特にサービス付き高齢者向け住宅は、住宅によって受けられるサービスが異なります。
サ高住で必ず提供されるのは、基本的に安否確認と生活相談です。食事や介護、夜間の見守り、医療との連携などは住宅ごとに違うため、契約前の確認が必要です。
表示されている月額費用以外に、何がかかるか
料金表に書かれている月額費用だけでなく、追加で必要になる費用も確認しました。
たとえば、
- 食費
- 管理費
- 水道光熱費
- おむつ代
- 洗濯代
- 理美容代
- 医療費や薬代
- 通院の付き添い費用
- レクリエーション費
- 退去時の費用
などです。
月額料金だけを見て決めると、入居後に思っていたより負担が大きくなることがあります。
「毎月、だいたいいくら必要になるのか」を、できるだけ具体的に聞いておくと安心です。
サ高住と特養では、重視したポイントが少し違いました
母は、サービス付き高齢者向け住宅を経て、現在は特別養護老人ホームで暮らしています。
施設の種類が違うため、選ぶときに重視したことも少しずつ異なりました。
サービス付き高齢者向け住宅では、
- 一人で過ごせる居室の環境
- 食事の内容
- デイサービスが併設されているか
- 夜間の見守り体制
- 介護が増えたときに、どこまで対応できるか
- 毎月の費用
を特に確認しました。
特別養護老人ホームでは、
- スタッフさんの対応
- 相談員さんとの話しやすさ
- 部屋から食堂などへの動線
- 医療との連携
- 日中の過ごし方
- 清潔さや施設全体の雰囲気
を大切にしました。
「介護施設」とひとまとめにせず、その施設がどのような役割を持つ場所なのかを知ったうえで見学すると、確認したいことが見えやすくなります。
※デイサービスを選ぶときも、同じ見方が役に立ちました。
→「デイサービスは早めに検討してよかった|90代の母を通わせて分かったこと」
最終的に、私が選んだ施設

いろいろな施設を見て回り、最後に「ここがいいな」と思ったのは、次のようなところでした。
- 相談員さん、事務の方、介護スタッフさんなど、関わる方の対応がよかった
- 部屋から食事をする場所までの動線が短かった
- 建物が清潔で、掃除が行き届いていた
- フロアに開放感があった
- 敷地の花や木が、いきいきしていた
最後のひとつは、意外に思われるかもしれません。
植物がきれいに手入れされていることだけで、介護の質が分かるわけではありません。
それでも私は、花や木にまで目が届いている様子に、その施設の丁寧さや余裕を感じました。
そこへ、食事の内容、デイサービスの併設、費用などの条件を合わせて、母が過ごしやすい場所を選びました。
「ここがいいな」と心から思えたところに、ありがたいことにご縁がありました。
※施設を選んだあと、申し込みに必要だった書類は、こちらの記事にまとめています。
→「特養の申し込みに必要だった6つの書類|市役所で受け取った資料から知った母の姿」
施設の種類によって、申し込みできる地域が異なります
施設を探すときは、住んでいる地域との関係も確認が必要です。
地域密着型サービスは、原則として、その施設がある市区町村の住民が利用する仕組みです。
一方、それ以外の介護施設やサービスは、他の市区町村に住んでいても申し込める場合があります。
また、特別養護老人ホームの入居は、住んでいる市だけで決まるのではなく、介護の必要性や家庭の状況などをもとに判断されます。
申し込みの条件や優先順位は、施設の種類や自治体によって異なります。
私は限られた時間で探していたことや、面会へ通うことを考えて、まず同じ市内の施設から候補を集めました。
ただ、市内だけに絞る必要はありません。
希望に合う施設が見つからない場合は、近隣の市区町村にも問い合わせてみると、選択肢が広がると思います。
私が施設選びで大切にしたこと
最後に、私が実際に確認したことをまとめます。
- 資料や公的な検索サイトで、施設の情報を集める
- 通える範囲の施設をリストにする
- 問い合わせと見学の申し込みは、施設へ直接電話する
- 見学の前に、外観と周辺の環境を下見する
- 入居されている方とスタッフさんの表情を見る
- スタッフさんの声のかけ方を確認する
- 食事の作り方や個別対応について聞く
- 部屋から食堂、お風呂、トイレまでの距離を確認する
- 相談員さんの対応を見る
- 夜間の体制や、医療機関との連携を確認する
- 月額料金以外に必要な費用を聞く
- 施設の種類と、利用できる地域を確認する
すべてを完璧に確認できなくても大丈夫です。
見学した短い時間だけで、施設のすべてが分かるわけでもありません。
それでも、
「ここなら、母が過ごしやすいかもしれない」
そう思える場所を、自分の目で見つけられれば、それで十分だと思います。
おわりに:「自分の目で選んだ」ことが、あとで自分を救います
施設選びには、体力も気力も使います。
それでも自分の足で見て回ってよかったと思うのは、費用や設備を比べられたからだけではありません。
「母が過ごしやすい場所を、私が自分の目で選んだ」
この事実が、施設にお願いすることへの罪悪感を、ずいぶん軽くしてくれたのです。
※罪悪感との付き合い方については、こちらの記事に書いています。
→「好きになれない親の介護。罪悪感との付き合い方を、経験者が本音で書きます」
親の施設を探し始めた方へ。
紹介サイトを利用するにしても、すべてを任せきりにせず、まずは自分なりの条件を整理してみてください。
そして、できる範囲で足を運んでみてください。
そこで感じた安心感や、心に残った小さな違和感も、大切な判断材料です。
「自分の目で確かめて選んだ」という経験は、その後、迷いや罪悪感が生まれたときにも、きっと自分を支えてくれると思います。
今日という一日が、あなたにとって心地よい「ちょうどいい距離」の一歩になりますように。
きーのこと


