特養に入居して分かった暮らしと費用|家族の負担はどう変わった?

特別養護老人ホームの居室と窓辺。母の入居後の暮らし 介護施設のこと

母が特別養護老人ホームへ入居して、しばらくが経ちました。

施設への入居を考えるとき、気になるのは「どのような暮らしになるのか」「費用はどのくらいかかるのか」、そして「家族の負担はどう変わるのか」ではないでしょうか。

私自身、入居が決まるまでは具体的な生活を想像できませんでした。

この記事では、母が特養へ入居してから分かったことを、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にいた頃と比べながらお話しします。

※特養への申し込みから入居までの経緯は、こちらの記事に書いています。

「特養は100人待ちでも入れる?要介護3の母が入居するまでにしたこと」

サ高住には、サ高住ならではの良さがありました

母が暮らしていたサ高住には、比較的お元気な方が多かったように思います。もちろん車椅子を利用されている方もいて、看取りまで対応してくださる施設でした。

デイサービスも併設されていたため、顔なじみの方とおしゃべりをしたり、レクリエーションや制作、季節の行事を楽しんだりする機会がありました。

自分の部屋から、毎日デイサービスへ通うような暮らしです。人との交流や、にぎやかな時間を楽しみたい方には、合っている環境だと思います。

ただ、母にはいくつか合わないことがありました。

サ高住へ移る前に利用していたデイサービスでは、送迎車に乗っている時間を負担に感じていました。

施設が近くても、何人かの利用者さんを順番に迎えたり送ったりするため、ルートによっては遠回りになります。車椅子の方が安全に乗り降りするためにも、時間が必要です。

それは仕方のないことなのですが、母にとっては、目的地までなかなか着かないことが憂うつだったようです。

また、母は片耳に補聴器をつけています。周囲に人が多い場所では会話を聞き取りにくく、デイサービスでも「話がよく聞こえない」とこぼしていました。

座るテーブルの位置など、母なりに気になることも多かったようです。

サ高住の併設デイサービスになってからは、車での送迎はなくなりました。それでも、居室からデイサービスのある場所まで歩く距離を「遠い」と感じていました。

サ高住やデイサービスがよくなかったわけではありません。ただ、母の体や性格には、別の暮らし方が合っていたのだと思います。

母が入居したのは、ユニット型の特養でした

特養のユニットの共用スペース。長いテーブルと椅子、奥にキッチン

特別養護老人ホームには、大きく分けて「従来型」と「ユニット型」があります。

母が入居したのは、ユニット型の特養です。

10人ほどの少人数のグループに分かれていて、その中心に、食卓のあるリビングとキッチンカウンターがあります。

私は以前、介護施設で医療事務の仕事をしていました。そこも立派な施設でしたが、食堂やお風呂、リハビリ室などへ行くためには、エレベーターで移動したり、長い廊下を通ったりする必要がありました。

今の特養では、自分の部屋から食事をする場所も、お風呂も、トイレも近くにあります。キッチンカウンターには、いつもスタッフさんがいてくださいます。

ドアを開ければ、すぐそこに誰かがいる。

この安心感は、母にとっても家族にとっても、大きなものでした。

※この施設をどうやって選んだのかは、こちらの記事に書いています。
「親の介護施設はどう選ぶ?介護施設で働いていた私が見学で確認したこと」

移動距離の短さが、母に合っていました

母は両膝の人工関節の手術を受けているため、長い距離を歩くことは負担になります。

サ高住にいた頃は、歩くことが難しいときだけ施設の車椅子を貸していただいていました。外出時には、市役所の制度を利用して、月に数百円で借りたこともあります。

今の特養では、母の状態に合った車椅子や押し車を施設で使わせていただけます。

母は車椅子をあまり好まず、できるだけ自分の足で歩きたい人です。

今の特養では移動する距離が短いため、ゆっくりでも自分の足で歩こうとしています。外出するとき以外は、ほとんど車椅子を使わなくなりました。

歩きたいという気持ちを、諦めなくていい。

母が落ち着いて暮らせている理由のひとつは、ここにあるのだと思います。

施設を見学するときには、居室から食堂やお風呂、トイレまでの距離も確認してみてください。

壁の掲示にも、施設らしさが表れます

手すりのついた施設の廊下と、壁に飾られた花のリースや貼り絵

見学のときから、私が気にしていたことがあります。それは、施設内の壁の掲示です。

入居者さんの写真や作品が、所狭しと貼られている施設もありました。にぎやかで、活気が伝わる良さがあると思います。

ただ、母が以前のデイサービスで行事に参加しなかったときは、当然ながら母の写真も作品もありませんでした。

壁を見れば、参加した方とそうでない方が、家族にも分かってしまいます。私は、それを少し寂しく感じました。

今の特養の壁は、品よく心地よく飾られ、季節に合わせて少しずつ変わっています。

また、入り口に並んでいるのは入居者さんのお顔ではなく、そのフロアを担当してくださるスタッフさんのお写真です。

母がどのような方にお世話になっているのか、表情まで見て分かる。家族にとって、とても安心できる配慮でした。

料金表を見て安心したこと

母が入居した特養では、介護度が上がっても、月額費用の差がそれほど大きくありませんでした。

年齢を重ねれば、介護度が上がる可能性があります。そのたびに費用が大きく増えていくとしたら、本人も家族も不安になります。

差が比較的小さいことは、私にとって大きな安心材料でした。

もし、あのままサ高住で最期までお願いしていたら、介護度が上がるにつれて費用も増え、母の年金を超えていたかもしれません。

そうなれば、また同居に戻り、私が疲れ果てた頃に特養を探し始める。そのような道もあったのだと思います。

費用は施設の種類や居室、介護度、所得などによって異なります。実際の金額については、各施設へご確認ください。

介護保険負担限度額認定が役立ちました

特養への申し込みとあわせて、介護保険負担限度額認定の手続きもしておきました。

所得や資産など一定の要件を満たす方について、介護保険施設での食費や居住費の負担が軽くなる制度です。

申請したとき、母はサ高住に入居していました。サ高住はこの制度の対象ではなかったため、しばらくは認定証を「持っているだけ」の状態でしたが、特養へ入居した今は役立っています。

申し込みのタイミングで、一緒に手続きをしておいてよかったと思います。

制度の内容や利用条件は、自治体や時期によって異なり、変更されることもあります。詳しくは、お住まいの自治体の窓口へご確認ください。

※負担限度額認定の申請や、毎年の更新については、こちらの記事に詳しく書いています。

「親のお金の管理|口座をまとめるとき本人確認で困ったことと、私がしている記録の残し方」

おむつや福祉用具の負担が軽くなりました

サ高住にいた頃は、おむつやパッドを私が購入して届けていました。

おむつが頻繁に必要になれば、市から無料で支給を受けられる制度もありました。しかし、当時母が暮らしていたサ高住は別の市にあったため、申請できませんでした。

今の特養では、おむつやパッドなどの消耗品が施設サービスに含まれています。

車椅子や押し車も、母の状態に合ったものを施設で使わせていただけます。家族がレンタルの手続きや買い替えをしなくてよいことも助かっています。

ちょっとした嗜好品は施設内で購入でき、預かり金から精算していただけます。

制度や施設のサービスによって、家族の負担はずいぶん変わるのだと実感しました。

洗濯物が早く戻ることも、母は気に入っています

サ高住では、外部の業者さんが衣類をまとめて洗濯していました。

洗濯代は別途必要で、衣類が戻るまでに4、5日ほどかかることもあり、母は少し不満そうでした。

今の特養では、普段の着替えを施設内で洗濯していただけるため、乾くと比較的早く部屋へ戻ってきます。母は、この点も気に入っています。

簡単なものは自分で手洗いし、ベランダ近くの低い位置に干すこともあります。

すべてを人にしてもらうのではなく、自分でできることを続けられるのも、母には合っているようです。

なお、洗濯料金が施設費に含まれるか、別途必要になるかは、施設や契約内容によって異なります。

訪問美容でパーマもお願いできます

母は昔から、白髪染めやパーマにこだわりのある人です。おしゃれをすることが、母の元気の源でもあります。

サ高住にも訪問美容はありましたが、母が利用していたところではカットのみでした。そのため、パーマをかけるときには、私が近所の美容院へ連れて行っていました。

今の特養では、訪問美容でカットだけでなく、パーマもお願いできます。

提携している美容室によって対応できる内容は異なるようなので、見学の際に確認しておくと安心です。

本人にとっては、暮らしの楽しみにもつながることです。

※母の補聴器のことは、こちらの記事に書いています。

「高齢の親の補聴器が合わないときに試したこと|買い替える前に見直した調整と使い方」

訪問マッサージも試しました

母は以前から、しっかりとした全身マッサージが好きで、定期的に施術を受けていました。

同居を始めてからも、母に合いそうな整体院や接骨院を探し、私が外の施術所まで連れて行っていました。

外出の負担を減らせたらと思い、訪問マッサージも数回試しました。

利用した事業所の事務の方からは、実際の施術は20分ほどで、訪問してから退出するまでを含めても30分以内になると説明を受けました。

母が体験したのは、やさしい力で触れる施術や、刺さない鍼を使った施術でした。

ただ、しっかりとした全身マッサージを好む母には、少し物足りなかったようです。数回試したあと、母自身から「いったんやめておく」と言われ、中止しました。

訪問マッサージは、外出が難しい方にとって便利な選択肢です。一方で、施術内容や力加減が本人に合うかどうかは、人それぞれだと感じました。

利用する前に、施術時間や内容、費用、体験利用ができるかなどを確認しておくと安心です。

通院の付き添いも、ほとんどなくなりました

サ高住にいた頃は、内科の訪問診療がありました。

それでも、皮膚科や眼科、耳鼻科などを受診するときには、私が付き添っていました。予約を取り、車を出し、待合室で待つ。それだけで一日が終わることもありました。

特養でも、施設内で診ていただける診療科には限りがあります。

それでも今の母は体調が落ち着いていて、以前ほど通院せずに過ごせています。生活のリズムや環境が母に合っているからなのかもしれません。

医療体制や通院時の対応は、施設によって異なります。見学や契約の際に、協力医療機関や家族の付き添いについて確認しておくと安心です。

施設へ移ると、ケアマネジャーさんの担当も変わりました

在宅で暮らしていた頃は、地域の居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんが担当してくださいました。

サ高住へ移ってからは、施設での暮らしや併設サービスに合わせたケアマネジャーさんに担当が変わりました。

特養へ入居した際も、特養専属のケアマネジャーさんに担当が変わり、母の状態や希望に合わせて、施設でのケアプランを作成してくださっています。

一方、契約や面会、日々の暮らしについて家族が相談するときの窓口になってくださるのは、主に生活相談員さんです。

今の特養の相談員さんたちは、本当に対応が丁寧です。申し込んでいたほかの施設と比べても、その違いを感じました。

見学や申し込みの段階で相談員さんの対応を見ておくと、入居後の家族の安心感も、ある程度は想像できます。

パンフレットには載らない、大切なチェックポイントだと思います。

今の母には、自由な過ごし方が合っています

窓辺のテーブルで本を読んで過ごす、施設での穏やかな時間

サ高住のデイサービスでは、おしゃべりやレクリエーション、制作、季節の行事など、さまざまな活動がありました。

一方で、母は一日を通して椅子に座って過ごす時間が長く、足のむくみを気にしていました。

デイサービスへ着ていく服も気にして、「新しい服が欲しい」と言うことがよくあり、私も一緒に服を買いに出かけていました。

今の特養には、入居者が毎日通う形のデイサービスはありません。

季節や行事に合わせた催しはあるようですが、普段は自分の部屋やユニット内で、思い思いに過ごしています。

母も以前ほど着ている服を気にしなくなり、「服を買いに行きたい」と言わなくなりました。

本を読んだり、お花を飾ったり、大好きなお昼寝をしたり。自分のペースで立ったり歩いたりしながら、のんびりと毎日を過ごしています。

以前気にしていた足のむくみも、今は改善されました。

暮らし方が変わったことだけが理由とは言い切れませんが、自分のペースで体を動かせる環境は、母に合っているように感じます。

家族の負担が軽くなりました

同居していた頃は、3食の献立を考え、通院に付き添い、夜中に母がトイレへ行く音が聞こえるたびに、気になって眠れませんでした。

サ高住へ移ってからも、おむつを届け、美容院や施術所へ連れて行き、通院の予約を取っていました。服を欲しがる母と、一緒に買い物へ行くこともよくありました。

今は、施設の方々が母の日々の暮らしを支えてくださっています。

母は施設で穏やかに暮らし、私は少しずつ自分の生活を取り戻すことができました。

手間もお金も、そして気持ちの負担も軽くなったと感じています。

※負担が軽くなった分、私は働く時間を少しずつ増やしていきました。
「介護離職からパートで復帰するまで|50代・ブランク半年でも仕事はありました」

母のために何もしなくなったわけではありません

面会で手を重ねる母と娘。そばに持参した花とお菓子

特養へ入居したからといって、私が母のために何もしなくなったわけではありません。

今でも母は、爪切りだけは私にしてもらいたいようです。

面会に行くと、「爪を切って」と頼まれたり、簡単なマッサージをおねだりされたりすることもあります。

以前の私なら、次々に続く母の頼みごとに、少し疲れてしまっていたかもしれません。

けれど今は、施設の方々に日々の暮らしを支えていただいているため、私にも心の余裕があります。

この距離だからこそ、母の爪を切ったり、肩や手を軽くほぐしたりすることも、快くしてあげられるのだと思います。

面会へ行くときには、母が好きそうな小さなお菓子やデザート、季節の切り花を持って行くこともあります。

「今度は、何を持って行ったら喜んでくれるかな」

そう考えられるようになったのも、私たちの間に、今のちょうどいい距離ができたからかもしれません。

介護を施設の方々に委ねることは、親を見放すことではありません。

毎日の介護を一人で抱えなくなったからこそ、家族にしかできないことを、無理のない気持ちでしてあげられるようになる。

私にとって特養への入居は、母との関係をそのような形に変えてくれました。

おわりに:母にも私にも、今の距離が合っています

特養には、費用や家族の負担が軽くなる良さがあります。

けれど、すべての方に特養が合うとは限りません。

サ高住での交流や行事を楽しむ方もいれば、母のように、少人数の中で自由にのんびり過ごすことが合う方もいます。

大切なのは、施設の種類だけで判断するのではなく、本人の体の状態や性格、好きな過ごし方に合っているかを見ることなのだと思います。

今、母は施設で穏やかに暮らしています。

私は定期的に短い面会へ行き、爪を切ったり、花やお菓子を届けたりしています。

離れたから、やさしくできるようになったことがあります。

この距離が、今の母と私にはちょうどいいのだと思っています。

※母を引き取ってから特養に入居するまでの全体の記録は、こちらの記事にまとめています。
「若干毒親」の母を引き取って介護した私の記録


今日という一日が、あなたにとって心地よい「ちょうどいい距離」の一歩になりますように。

きーのこと

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