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母は、実家で一人暮らしをしていた頃から補聴器を使っていました。
お友達にすすめられて購入した片耳用の補聴器で、数十万円したと聞いています。
ところが、母がデイサービスへ通うようになると、
「今の補聴器では、うまく聞こえない」
「両耳にしたい」
と、強く訴えるようになりました。
補聴器は、値段の高いものを買えば、すぐによく聞こえるようになる。
当時の私は、どこかでそのように考えていたのかもしれません。
けれど、母と一緒に耳鼻咽喉科や補聴器店へ通い、別の補聴器や集音器も試した結果、最終的に使い続けているのは、最初に購入した補聴器です。
この記事では、90代の母が「補聴器が合わない」と訴えたとき、私たちが試したことと、その経験から気づいたことをお話しします。
※母との同居介護から、デイサービス、サ高住、特養入居までの記録は、こちらの記事にまとめています。
→『若干毒親』の母を引き取って介護した私の記録|同居・介護離職から特養入居まで
母が補聴器を使い始めたのは、一人暮らしの頃でした
母が最初の補聴器を購入したのは、まだ実家で一人暮らしをしていた頃です。
お友達からすすめられたことが、きっかけだったようです。
購入したのは、片耳用の補聴器でした。
決して安いものではなく、数十万円したと聞いています。
その後、母が私の家の近くへ引っ越してからは、近所の電気店で調整していただくようになりました。
購入したお店とは違いましたが、同じメーカーのサポートを引き継いでいただくことができました。
長く使うものだからこそ、購入後も相談や調整ができる場所があることは、とても心強いことでした。
デイサービスでは、さまざまな音が重なりました
母が補聴器への不満を強く訴えるようになったのは、デイサービスへ通うようになってからです。
デイサービスの室内では、テレビの音が流れています。
スタッフの方がマイクを使って、レクリエーションの説明をすることもあります。
同じテーブルでは、ほかの利用者さんたちが会話をしています。
母にとっては、いくつもの音が同時に耳へ入ってくる環境でした。

「何を言っているのか、よく分からない」
「今の補聴器では、うまく音を拾えない」
「片耳ではなく、両耳にしたい」
母は、何度もそう話しました。
静かな部屋で一対一の会話をするときと、複数の音が重なる場所では、聞こえ方が違ったのだと思います。
※母がデイサービスへ通い始めたときの様子や、家族として感じたことは、こちらの記事に書いています。
→デイサービスは早めに検討してよかった|90代の母を通わせて分かったこと
聞こえが心配になり、耳鼻咽喉科を受診しました
母の訴えが続いたため、まず耳鼻咽喉科を受診しました。
母は以前から、
「耳が塞がったような感じがする」
「よく聞こえない」
と話すこともありました。
補聴器だけの問題なのか、耳そのものに不調があるのか、家族には判断できません。
診察を受けた際には、耳の中を綿棒などで触らず、耳垢を自分で無理に取らないようにという説明も受けました。
聞こえ方が変わったとき、すぐに補聴器の買い替えを考えるのではなく、先に耳の状態を診ていただくことは大切だったと思います。
母の希望で、新しい補聴器も作りました
耳鼻咽喉科を受診したあと、母は新しい補聴器を作ることになりました。
私たちの場合は、医師に必要な書類を書いていただき、市へ申請しました。
その後、耳鼻咽喉科と連携している補聴器店で耳の型を取り、母に合わせたものを作っていただきました。
ただし、補聴器に関する公的な支援制度には、対象となる条件があります。自治体独自の助成がある場合も含め、利用できる制度や申請方法は地域や本人の状態によって異なります。
実際に検討される際は、受診先の医療機関や、お住まいの市区町村へご確認ください。
母は、新しい補聴器ができることを楽しみにしていました。
「これで、もっとよく聞こえるようになる」
そう期待していたのだと思います。
新しい補聴器も、母には合いませんでした
ところが、新しく作った補聴器を使い始めても、母は満足しませんでした。
「遠くの音まで、思うように拾えない」
母はそう言い、やがて使わなくなりました。
耳の型を取り、自分に合わせて作ったものです。
それでも、本人が期待した聞こえ方になるとは限らないのだと知りました。
その後、テレビ通販で見かけた集音器も購入し、母へプレゼントしました。
けれど、それも母には合わず、使わなくなりました。
よかれと思って新しいものを用意しても、使う本人が「聞きやすい」「使いやすい」と感じなければ、続きません。
買うたびに、今度こそはと思いました。
その一方で、補聴器は上を見ればきりがなく、よりよいものを求めるほど、費用や調整、メンテナンスの負担も増えていくと感じました。
母の場合は、補聴器も集音器も、最後まで合いませんでした。
けれど、合う人もいます。
母が使わなかった集音器は、メルカリですぐに売れました。
必要としている方が、たしかにいるのだと思いました。
合うかどうかは、使ってみないと分かりません。
なかには、無料で貸し出しているものもあります。
私は買ってから合わないと分かったので、先に借りられるなら、そのほうがいいと思います。
買い替える前に、最初の補聴器を見直しました
いくつか試したあと、私たちは、もともと持っていた補聴器をもう一度見直すことにしました。
販売サポートの方へ、何度も調整をお願いしました。
その中で分かったのが、母が自分で音量を調整するための器具を、十分に使いこなせていなかったことです。
補聴器そのものが合っていないと思っていましたが、操作の仕方や音量の設定にも原因があったのかもしれません。
そこで、私が定期的に確認し、必要に応じて調整するようにしました。

すると、母は最初の補聴器を再び使うようになりました。
現在も、その補聴器を使用しています。
今、母が暮らしているのは特別養護老人ホームです。
デイサービスのように、テレビやマイクの音、周りの方の会話が同時に重なる場面は少なくなりました。定期的なイベントや日々の体操などでは、今の補聴器で問題なく過ごせているようです。

もし今もデイサービスへ通い続けていたら、聞こえ方について、また別の問題が出ていたかもしれません。
聞こえ方は、補聴器だけでなく、過ごす場所や周囲の音にも左右されるのだと感じています。
以前のように、聞こえ方への不満を口にすることは、ほとんどなくなりました。
新しいものを次々に探すより、今ある補聴器が正しく使えているか、調整が合っているかを確認する。
母の場合は、そのことがいちばん役に立ちました。
補聴器が合わないとき、私たちが確認したこと
母との経験を振り返り、補聴器が合わないと感じたときに確認したことをまとめます。
- 耳鼻咽喉科で、耳の状態や聴力を診ていただく
- どのような場所で聞こえにくいのか、本人の話を聞く
- 購入店やメーカーのサポートへ、再調整を相談する
- 本人が音量調整などの操作を理解できているか確認する
- 家族が定期的に、使用状況や困りごとを確かめる
- 「大丈夫、聞こえているね」と本人と一緒に確認する
- 新しく購入する前に、今ある補聴器を見直す
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、補聴器は一人ひとりの聴力や使用する場所に合わせた細かな調整が必要だと案内しています。
補聴器について相談できる耳鼻咽喉科医として、「補聴器相談医」の制度もあります。
困ったときには、家族だけで抱え込まず、耳鼻咽喉科や補聴器の専門家へ相談することも選択肢のひとつです。
「合わない」という言葉の奥にあったもの
母が何度も「聞こえない」「合わない」と訴えるたびに、私は何とかしなければと思いました。
新しい補聴器を作り、集音器を買い、調整にも通いました。
それでも母が満足しないときには、正直なところ、
「これ以上、どうすればよいのだろう」
と思うこともありました。
けれど、聞こえにくいということは、母にとって、人との会話や周りとのつながりに関わる大きな問題だったのだと思います。
デイサービスで皆さんの話が聞き取りにくければ、心細さや寂しさもあったでしょう。
母は90代になってからも、新しい補聴器を試し、集音器を試し、その都度、自分なりに聞こえ方と向き合っていました。
うまくいかなかったことだけではなく、新しい機器や環境を受け入れようとしていた母の頑張りも、忘れたくありません。
高い補聴器へ買い替えることだけが、答えではありませんでした
補聴器は、買って終わりではありませんでした。
使う場所が変われば、聞こえ方も変わります。
本人が操作を覚えることや、専門家に調整していただくこと、家族が時々確認することも必要でした。
母の場合は、別の補聴器や集音器を試したあと、最初の補聴器へ戻りました。
補聴器の業者さんへ出向けば、より高機能な商品も紹介されます。私たちも、両耳で80万円を超える補聴器があると案内されたことがありました。
母は新しいものを知ると、すぐにお店へ行きたがりました。
けれど今は、
「もう行かなくても大丈夫だよ。私が調整できるからね」
と伝えています。
そして私が定期的に音量を調整し、
「大丈夫。聞こえているね」
と母と一緒に確認するようになりました。
その言葉も、母にとっては安心につながっているのかもしれません。
※母に買ってよかったもの、返されてしまったものは、こちらの記事にまとめています。
→「90代の母に買ってよかったもの|敬老の日に選びたい贈り物と、返されたもの」
完璧に聞こえることを求めすぎないようになりました
母は、何に対しても完璧を求めるところがあります。
皮膚の小さな変化が気になったときも、涙がよく出るようになったときも、病院へ付き添いました。
そのたびに先生から、
「年齢とともに、こういう変化も出てくるんですよ」
「気にしすぎなくても大丈夫ですよ」
と、やさしく説明していただきました。
補聴器を使った聞こえ方についても、すべての音が完璧に聞こえる状態を求めるのではなく、今の暮らしの中で困らず過ごせているなら、それで大丈夫なのだと、少しずつ受け入れられたのかもしれません。
もちろん、どこにお金をかけるかは、人によって違います。
人との会話や仕事、趣味などのために、より心地よい聞こえを求める方にとって、高機能な補聴器はとてもよい選択肢だと思います。
一方で母の場合は、高価なものへ買い替え続けるよりも、今ある補聴器を家族が定期的に調整し、本人と一緒に聞こえ方を確かめる方法が合っていました。
今は特養で、最初の補聴器を使いながら穏やかに過ごしています。
※母が特養へ入居してからの暮らしや、家族の負担の変化については、こちらの記事に書いています。
→特養に入居して分かった暮らしと費用|家族の負担はどう変わった?
もし高齢の親御さんが「補聴器が合わない」と話しているなら、すぐに買い替える前に、まずは耳の状態と、今の補聴器の調整や使い方を確認してみてもよいのかもしれません。
本人の希望を聞きながら、家族だけで背負いすぎず、専門家の力も借りる。
補聴器との付き合い方にも、その親子にとって無理のない「ちょうどいい距離」があるのだと思います。
参考情報
今日という一日が、あなたにとって心地よい「ちょうどいい距離」の一歩になりますように。
きーのこと


