高齢になった親のお金を、いつから、どのように管理すればよいのか。
これは、とても難しい問題だと思います。
親子であっても、本人のお金です。
通帳を見せてもらうことや、暗証番号を聞くことに抵抗を感じる方もいるかもしれません。
私も、母と同居を始めたからといって、すぐに通帳を見せてもらったわけではありません。
母のお金を自分から管理しようとも思っていませんでした。
けれど、母の年齢が上がり、介護が必要になるにつれて、銀行や保険、施設費などの手続きを一緒に行うことが増えていきました。
この記事では、母のお金を管理するようになるまでの経緯や、複数あった銀行口座をまとめたときのこと、現在行っている記録の残し方についてお話しします。
※母を引き取ってから特別養護老人ホームへ入居するまでの経緯は、こちらの記事に書いています。
最初から、母のお金を管理していたわけではありません

母と同居を始めた頃、私は母の通帳やお金を管理していませんでした。
実家へ帰ったときに、一緒に銀行のATMへ行くことはありましたが、最初のうちは母が自分で操作し、自分でお金を引き出していました。
その後、何度か一緒に銀行へ行くうちに、
「この金額を下ろしてくれる?」
と頼まれるようになりました。
それでも、お金をいくら引き出すのかを決めるのは母です。
私は、頼まれた金額を引き出すだけでした。
そうしたことを繰り返すうちに、母から、
「もう任せるわ〜」
と言われました。
そこで初めて、母と話し合いながら、複数あった銀行口座を整理することにしました。
親のお金の管理は、ある日突然すべてを引き受けるものではないのかもしれません。
私たちの場合は、母の様子を見ながら少しずつ手伝うことが増え、自然に管理を任されるようになっていきました。
※母を引き取ったとき、実家のお金について私が何も知らなかったことは、こちらの記事に書いています。
→「親を引き取るタイミング|しっかりした母だからこそ、一人で決めていました」
※母が元気なうちに聞いておけばよかったことは、こちらの記事にまとめています。
→「親が元気なうちに聞いておきたいこと|母を引き取って初めて知った家・土地・お金の話」
口座を0円にする前に、入金と引き落としを確認しました
母はいくつかの銀行口座を持っていました。
管理する口座をひとつにまとめようと考えましたが、先に残高を移せばよいわけではありません。
まず、それぞれの口座について、次のことを確認しました。
- 年金など、定期的な入金がないか
- 電気代や保険料などの引き落としがないか
- 今後も必要な口座か
- 通帳やキャッシュカード、届出印がそろっているか
特に大切だったのは、年金の振込先や、毎月の引き落としに使われている口座を確認することでした。
口座を空にしてから年金の入金や引き落としが残っていることに気づけば、もう一度手続きが必要になります。
そこで、先に年金の受取口座や、各種引き落とし口座の変更手続きをしました。
実際に新しい口座へ入金され、引き落としも変更されたことを確認してから、使わなくなる口座のお金を移しました。
最後は振込手数料も計算し、残高が0円になるようにしました。
口座を整理するときは、残高を移すことよりも先に、何が入金され、何が引き落とされているのかを確認することが大切です。
残高が0円になっても、口座は解約されません

私は、残高を0円にすれば、口座の整理はほとんど終わりだと思っていました。
けれど、残高が0円になっただけでは、口座を解約したことにはなりません。
口座を正式に解約するには、銀行で別の手続きが必要でした。
母の口座のうち、自宅から行ける銀行については、私が母を連れて窓口へ行き、母本人が解約の手続きをしました。
問題は、実家のある地域の地方銀行でした。
実家は遠方にあり、母はすでに施設へ入居していたため、その銀行まで連れて行くことはできません。
調べてみると、電車で行ける場所に同じ銀行の支店があることが分かりました。
私は、その支店へ通帳などを持参し、事情を説明しました。
娘が代理で解約できるわけではありませんでした
銀行の窓口では、本人が来店することが原則で、娘の私が代理で口座を解約することはできないと説明を受けました。
ただ、母が施設へ入居していることを伝えると、銀行から施設へ電話をして、母本人へ確認する方法を案内していただけました。
施設の職員さんにも事情をお話しし、電話を母へつないでいただきました。
銀行の方が母本人へ口座解約の意思を確認し、本人確認ができたことで、手続きを進めることができました。
私が母の代理として自由に解約したのではありません。
銀行が直接、母本人へ確認したうえで行われた手続きです。
施設の職員さんにもご協力いただき、無事に口座を整理することができました。
銀行によって必要な書類や本人確認の方法、代理人ができる手続きは異なります。
親が窓口へ行けない場合は、自分だけで判断せず、まずは口座のある銀行へ事情を説明して相談することが大切です。
生命保険や医療保険の内容も確認しました
銀行口座だけでなく、母がどのような生命保険や医療保険に入っているのかも確認しました。
加入してから数十年が経っている保険もあります。
「今の母に、本当に必要な保障なのだろうか」
「入院や介護が必要になったとき、どのような保障を受けられるのだろうか」
分からないことが多かったため、母を連れて、保険証券を持って保険会社の支店へ話を聞きに行きました。
その場で保障内容を説明していただき、現在の母にも必要な保険なのかを一緒に確認しました。
あわせて、次のような手続きも行いました。
- 住所の変更
- 保険料を引き落とす口座の変更
- 家族の連絡先の登録
- 母が認知症になったときや入院したときに、家族が手続きできるようにするための登録
手続きの際には、母本人の確認と、母への意思確認もありました。
認知症が進んでからでは、本人による確認や手続きが難しくなることもあります。
母が自分の意思を伝えられるうちに、一緒に保障内容を確認し、必要な登録を済ませておけたことはよかったと思っています。
保険会社や契約内容によって、家族ができる手続きや必要な登録は異なります。
保険証券を確認し、分からないことがあれば、本人と一緒に保険会社へ相談しておくと安心です。
母専用の財布を作りました

母のお金を管理するようになってから、母専用の財布を用意しました。
母の買い物は、基本的にその財布から支払います。
手元のお金が少なくなったら、母の口座から1万円ずつ引き出して、財布へ入れています。
一度に大きな金額を引き出さないのは、いくら預かっているのかを把握しやすくするためです。
私が一時的に立て替えた場合は、そのまま曖昧にせず、母の財布からすぐに精算します。
親子だからといって、母のお金と私のお金を一緒にしない。
これは、管理を任されてから意識していることです。
母のお金は、スプレッドシートで記録しています
母のために使ったお金は、レシートを残し、スプレッドシートへ入力しています。
記録している項目は、次のとおりです。
- 日付
- 店舗名・入金元
- 購入したもの
- 金額
- 残高
- 備考
母の口座からお金を引き出し、手元で管理するお金に加えたときも、入金した日付と金額を記録します。
たとえば、母の口座から1万円を引き出した場合は、「銀行から入金」と入力し、手元のお金の残高へ加えます。
母のために買い物をしたときは、店舗名と購入内容、支払った金額を入力し、その分を残高から差し引きます。
備考欄には、通常の記録だけでは分かりにくいことを書き加えています。
たとえば、私が一時的に立て替えたことや、その後母のお金から精算したこと、レシートが発行されなかった支払いなどです。
こうして入金と支出の両方を記録しておくと、現在、母のお金をいくら預かっているのかが分かります。
あとから見返したときにも、「いつ、どこで、何のために使ったのか」を確認できるようにしています。
通帳にも、何に使ったお金かを記入しています
銀行からお金を引き出したときは、通帳にも用途を記入しています。
ただし、ATMで記帳する前に通帳へ書き込むと、機械で読み取れないことがあります。
そのため、次の取引が通帳へ印字されたあとに、余白へ用途を書き込むようにしています。
通帳へ直接書き込むのが心配な場合は、スプレッドシートやノートだけで管理してもよいと思います。
大切なのは、自分が後から見て分かることと、必要になったときに家族へ説明できる状態にしておくことです。
サ高住では、日用品を私が買っていました
母がサービス付き高齢者向け住宅で暮らしていた頃は、次のようなものを私が買って届けていました。
- ショーツにつける尿漏れパッド
- トイレットペーパーやティッシュなどの消耗品
- 必要な衣類
母は初め、紙おむつを使うことに抵抗がありました。
その日の状態に合わせて、紙おむつを使う日と、ショーツに尿漏れパッドをつける日を、自分で使い分けていたようです。
そのため、当時、私が主に買って届けていたのは、ショーツにつける尿漏れパッドでした。
その後、尿漏れの量がだんだん増えてきたこともあり、特養へ入居してしばらくしてから、紙おむつを使うようになりました。
紙おむつといっても、トレーニングパンツのような形をした、比較的薄手のパンツタイプです。
毎回パンツタイプのおむつごと交換しなくて済むように、現在はおむつの中にパッドを入れて使っています。
おむつとパッドは施設の料金に含まれていることも母へ詳しく説明し、母自身が納得したうえで、少しずつ現在の使い方へ変わっていきました。
現在の特養では、おむつや、おむつの中に入れて使うパッド、日々の消耗品を施設で用意していただけます。
そのため、以前のように私が買って届けるものは少なくなりました。
特養には、母のお金を少額預ける決まりがあります
現在の特養には、母のお金を少額預ける決まりになっています。
母の場合は、そのお金から、美容院や訪問マッサージなどの費用を精算していただいています。
施設内では飲み物やちょっとしたお菓子も購入できますが、私は面会のときに、母の好きなお菓子や飲み物を持って行っています。
持ち込んだものは、施設の職員さんに確認していただいています。
日々の衣類も、今持っているもので十分になり、新しく買い足すことはほとんどなくなりました。
デイサービスへ通っていた頃の母は、たくさんの方に会うため、着て行く服を気にしていました。
現在の特養では、同じフロアにいる20人ほどが10人ずつのグループに分かれて暮らしています。
毎日顔を合わせる方も決まっているため、以前ほど服装を気にしなくなったように感じます。
今は、母がすでに持っている服を大切に着てもらっています。
※特養に入居してからの暮らしと費用については、こちらの記事に書いています。
→「特養に入居して分かった暮らしと費用|家族の負担はどう変わった?」
母が好きだった花も持って行きます

面会へ行くときには、好きなお菓子や飲み物と一緒に、花屋さんでちょっとした切り花を買って行くこともあります。
もともと花が好きだった母は、花を見せると何よりご機嫌になります。
花瓶へ生けた花を眺める母を見ていると、施設で暮らすようになっても、やっぱりお花が大好きなのだと感じます。
以前のように日用品や衣類を買うことは少なくなりました。
その代わりに今は、母が喜ぶお菓子や飲み物、季節の花などに、母のお金を使っています。
介護保険負担限度額認定という制度を知りました

母の施設を探していたとき、インターネットで「介護保険負担限度額認定」という制度を知りました。
これは、所得や資産などの要件を満たした方について、特別養護老人ホームなどを利用するときの居住費や食費の負担を軽減する制度です。
私は以前、有料老人ホームで医療事務の仕事をしていました。
それでも、この制度については知りませんでした。
有料老人ホームは制度の対象ではなかったため、仕事をしていた頃には知る機会がなかったのだと思います。
母が要介護3になり、特養への申し込みをしたときに、市役所で一緒に申請しました。
※特養への申し込みから入居までの経緯は、こちらの記事に書いています。
→「特養は100人待ちでも入れる?要介護3の母が入居するまでにしたこと」
母は、資産要件の基準に近いところでした
審査の結果、母は資産要件の基準に近いところで、認定を受けることができました。
もし資産があと数百万円多かったら、認定を受けられず、施設にかかる費用も今より大きくなっていたかもしれません。
母は、この制度を知っていて資産を減らしていたわけではありません。
私も母も、申請するまで制度の存在を知りませんでした。
母は、それまでに自宅の修繕をしたり、家族のお祝いにお金を使ったりしていました。
母の地域では、檀家になっていたお寺の修繕にともなう数十万円の負担もありました。
檀家の仕組みや負担の方法は、地域やお寺によって異なると思います。
私も詳しいことは分かりませんが、母の地域では、お寺と関わりのある地域の家々が費用を負担していました。
また、村の事情でお墓を移転した際には、新しい立派なお墓も建てていました。
母は以前から、
「お金は持っていてもしょうがないから。お葬式代だけあれば、それでいいのよ〜」
とよく話していました。
必要なことや家族のために、まとまったお金を惜しまず使う母でした。
結果として、その母のお金の使い方が、今の母を助けることにもつながりました。
母の性格や生き方は、ちゃんと理にかなっていたのかもしれない。
今は、感謝しかありません。
介護保険負担限度額認定には更新が必要です
母の場合、認定証の有効期間は8月1日から翌年7月31日までで、毎年更新の手続きが必要です。
更新時には、母が持っている銀行口座の通帳の写しなどを提出しています。
母の口座を整理し、入出金や残高が分かるようにしておいたことは、こうした手続きにも役立っています。
申請の時期や必要書類、認定の基準は、本人の状況や自治体によって異なる場合があります。
詳しくは、お住まいの市区町村や施設の相談員さんへご確認ください。
実家じまいにかかったお金は、別に管理しました
実家の売却や家財の片付け、仏壇じまい、墓じまいなどには、日々の買い物とは別に大きなお金が動きました。
そのため、実家じまいにかかった費用は、母の普段の生活費とは分けて記録しました。
ノートや別のスプレッドシートを使い、契約書、領収書、振込明細などもまとめて保管しています。
金額が大きくなるほど、あとで記憶だけを頼りに説明することは難しくなります。
面倒でも、その都度記録しておくことが大切だと感じました。
※実家じまいにかかった費用については、こちらの記事にまとめています。
→「実家じまいの費用|85万円の見積もりから家財回収を55,000円に抑えた方法」
親のお金を管理するときに、私が大切にしていること
最後に、私が実際に行っていることをまとめます。
- 本人の気持ちを確認しながら、少しずつ管理を引き受ける
- すべての銀行口座と保険証券を確認する
- 口座を0円にする前に、年金などの入金と引き落としを調べる
- 年金の受取口座や引き落とし口座を先に変更する
- 変更が完了したことを確認してから、残高を移す
- 口座解約の方法や本人確認について、銀行へ相談する
- 生命保険や医療保険の保障内容を本人と一緒に確認する
- 住所、引き落とし口座、家族の連絡先などを変更する
- 本人が手続きできなくなった場合に備え、家族が利用できる制度や登録がないか保険会社へ確認する
- 母専用の財布を作り、自分のお金と分ける
- 現金は必要な分だけ、少額ずつ引き出す
- レシートを保管する
- 銀行からの入金と、母のために使った支出の両方を記録する
- 日付、店舗名・入金元、購入内容、金額、残高、備考を残す
- 介護保険負担限度額認定など、利用できる制度がないか調べる
- 実家じまいなどの大きな支出は、日常の生活費と分けて管理する
すべてを完璧にしようとすると、大変です。
私も、最初から今の方法で管理していたわけではありません。
母の状況が変わるたびに必要なことを調べ、少しずつ記録の方法を整えてきました。
親のお金を管理するうえで一番大切なのは、「いつでも説明できる状態」にしておくことだと思っています。
自分のためにも、母のためにも、そして家族との不要な行き違いを防ぐためにも、記録は私を守ってくれます。
親のお金に触れることには、責任も迷いもあります。
だからこそ、本人の気持ちを置き去りにせず、分からないことは銀行や保険会社、施設、市役所などへ相談しながら進めることが大切です。
母が自分でできることは母に任せ、難しくなったところだけを私が手伝う。
そうして少しずつ引き受けてきたことが、私たちにとっての「ちょうどいい距離」だったのだと思います。
今日という一日が、あなたにとって心地よい「ちょうどいい距離」の一歩になりますように。
きーのこと


